佐渡ロングライド

今回、僕自身はおそらく10度目の(もうちゃんと数えてないが…)佐渡訪島。初めて訪れたのは1984年の夏。二度目はそれからちょうど10年後の1994年の秋。両津で相方と自転車を借りて加茂湖沿いをぐるっと、移転したての朱鷺保護センタまで走った。その年の春から朱鷺が一般公開されたのだ。1999年の夏には相方と今回同行した元同僚@928 Carbon(当時は現同僚)と三人で彼の車で一周している。翌年2月には某タレントのディナショウのスタッフとして仕事で二泊した。

1999年8月24日

1999年に元同僚@928 Carbon(当時は現同僚)と訪れた朱鷺保護センタ。ほら雨降ってる。

それから数年はすっかり離れていたのだが、2006年の2月にBianchi Attivoを買って、その年の春に、自転車屋に置いてあったチラシで第一回佐渡ロングライドの存在を知った。行きたくて行きたくて、でもそんな距離走ったこともないし不安も大きく、取り敢えずエントリしてお金も払ったが、結局仕事の都合で日程的に難しくなり断念。

去年、第二回開催には満を持して(?)参加、130kmを走った

そして、今年。どうにかこうにか一周210kmを走ることができた。大好きな佐渡で、しかも正に僕が自転車に乗り始めた年から始まったロングライド・イベントに、極私的で不思議な因縁を感じざるをえない。

1984年に朱鷺保護センタに特別に入れてもらって、数メートルの間近で見たミドリ、94年の一般公開の際に望遠鏡の先でずっと羽繕いをしていたミドリ…その半年後に死んでしまったミドリ。そのミドリに「せめて年に一度くらいおいでよ」と言われているような気がしてならない。ミドリはいま剥製となって現地の資料館に展示してある。朱鷺と自転車…。僕には、ミッシングリンクがここで繋がっているような、そんな奇妙奇天烈な(そして他人が聞いたら吹き出しそうな・笑)縁を感じるのだ。

と、ほとんど同じようなことを昨年の5月13日にも書いている(笑)。

そんな訳で、2008年5月17日、去年と同じ午前10時新潟港発のジェットフォイルで僕らは両津港に着いた。

両津港到着

その日は、宅配便営業所留めで送ってあった元同僚@928 Carbonのバイクをピックアップしたり、その間に僕と相方は朱鷺保護センタまでサイクリングしたり、会場まで行って受付したり、バイクのセッティングしたり。それから前夜祭参加して、夕日見て、宿でカニ食べて…。

イベント前日
イベント前日
イベント前日


さて、5月18日、イベント当日。ちょっとした段取りミスで、少し集合に遅れ、僕と元同僚@928 CarbonはAコースのかなり後半に並んだ。Aコース先頭より後ろのBコースの先頭の方が近かったのではないかな。まあそのくらいの位置。見事に晴れたが、気温は少し肌寒いかなというところ。ウインドブレーカを着ている人もちらほら。僕は半袖のシャツにアームカバー。

いよいよスタート

スタートゲートはずっと先。まったく見えない。

今にして思えば、去年、僕はやはり少し緊張していたんだなぁ。初参加だったし一人だったし天気も悪くて寒かったし。今年は打って変わってすっかりうきうきモード(笑)。ゲート前で並んでいても、早く走り出したくて仕方がなかった。元同僚@928 Carbonは少し緊張していたかな…。

6時5分、いよいよ僕らがスタート。人数の関係で元同僚@928 Carbonより一列前でスタートすることになってしまったので、スタートしてすぐちょっとだけ彼を待って、一緒に走り出した。

これまた去年は、スタート後すぐに「誰についていけばいいのか」なんて考えながら黙々と走っていたが、今年はそんなことも考えず、「海、蒼いー!」「気持ちいー!」なんてそればかり。お気楽に走る。

相川AS

6時50分頃、約20km地点の相川のAS(エイドステーション)に到着。元同僚@928 Carbonはフロントタイヤを左右逆に填めてしまったらしく、センサが反応しなかったようだ。ここで修正。7時2分にASを離脱、再スタート。

徐々にパンクやメカトラで道端で修理している人が目につき始める。僕もチューブ二本とパンク修理キットは持ってきているが、パンクは嫌だなぁ。Dコース(40km)に出る相方にもチューブだけは渡してある。20インチのチューブなんて、他に持ってきている人は少ないだろうし、かといって工具まで持たせても彼女自身はチューブ交換なんてできないわけで、もしパンクしたら誰かに頼んでチューブだけ渡して「交換してください」とお願いしなさい、と言ってある。まあそれでもとにかくパンクしないに越したことはない。

7時54分に約40km地点の入崎ASに到着。ここではおにぎり食べたりバナナ食べたり、少し長居をして8時13分に離脱。

入崎AS

さてそうこうするうちにやって来ました、Z坂。去年も足着かずに上れたし特に不安はないのだが、実際にこの派手な絵面を見てしまうと…苦笑が漏れる。

Z坂目前

ひーふー上っていく。ふむ、上りだしてしまえばそんなにきつい坂ではない。行ける行ける、と思ったところ、二つ目の折り返しあたりトンネルの手前で元同僚@928 Carbonがバランスを崩しこけそうになってしまったので、一旦止まって休憩とする。8時52分から3分ほど。

Z坂途中

ひゃあ、絶景である。

8時55分にリスタート。さて次は大野亀だ。やっぱりZ坂よりこっちの坂の方がキツいよな。距離は短いけど。ひーふー、この坂もクリア。ここは元同僚@928 Carbonも止まらずに越えられたようだ。

9時38分に次なるASであるはじき野に到着。バナナ食べたり水をボトルに詰めたり。ここには9時52分までいた。

はじき野AS

ここから大佐渡の東岸。去年は単調に感じて少し飽きてしまった区間だが、今年は蒼い海と空に見とれることしばし。印象が全く違う。が、だんだんお腹が空いてきたのも事実で(笑)、次の両津ASで配られるお弁当に思いを馳せながら、走る。

11時3分に両津ASに到着。今年から新設のCコースはここでゴールなので、休憩だけのA・Bコースの誘導とCコースの誘導が二股に分かれ、アナウンスも「Cコース、ゴールおめでとう」コールと「A・Bコースの人は通過申請をした後にお弁当を受け取ってください」という案内で忙しそう。僕らもバイクラックに自転車を止め、通過申請を済ませお弁当を受け取る。握り飯。

アスファルトにどかっと腰を下ろしのんびり食事。気温も上がってきて、決して寒いわけじゃないのだが、適度に疲労している足腰に日光で暖まったアスファルトの温度が心地よい。ああ、このまま横になったら眠ってしまいそう(笑)。

両津AS

何故か両津港自衛隊の艦が停泊していた。中央の黄色いジャージの方は僕でも元同僚でもありません…。

両津AS

適度な疲労と満腹感。天気もいいし。元同僚@928 Carbonは、Cコースでここでゴールしてこのままフェリーに乗って帰るのもありだなぁ…なんて呟いていた(笑)。事実、僕らはまだ210kmの半分も走っていないのだ。

さて、実はもうのんびりしていられない。この両津ASから足切り(制限時間)が設定されているのだ。両津ASは12時30分である。それまでにASを出発していないと自動的にリタイアとみなされてしまう。

意を決して(笑)11時58分にスタート。このまま休んでいると根が生えちゃいそう…。30分のアドバンテージ。次の多田ASは約40km先。勾配図を見ると区間前半に細かい坂がちらほら。ヘタレな僕らは、坂が一段落した中間の120km地点あたりで一度休憩を入れようと相談。取り敢えず20km先を目指す。

勾配図

今までのコースはA・B・Cコースとも共有だったので、三コースの参加者が入り乱れていたけれど、両津から先はAとBも分かれてしまうので、がくっと自転車密度が減った。しばらくの間、前後に他の自転車は見えず、僕ら二人だけで走った。このころは、何となく「30分のアドバンテージ」に余裕を持ってしまっていたな。あとで痛い目を見ることになる。

メータ読みでちょうど120kmのあたりにタイミングよく自動販売機を発見。休憩。12時48分頃。

120kmあたり

こうして並べてみるとセッティングの違いがあからさまで面白い。

120kmあたり

このあたりには鯉のぼりがちらほら。旧暦でお祝いするってことなのかな。

120kmあたり

さて、まだ道程は長い。

自販にはお茶や炭酸、コーヒーはあれど、水がない…。ボトルはまだそれほど減っていないのでここでは何も買わないことにした。4分ほど休み12時52分に出発。が、10分も走らないうちに元同僚@928 Carbonがブレーキから異音がするかも、とのことで一時停止。点検するも特に異常はなさそう。目を上げるとそこにはまたコカコーラの自動販売機。ただこれまた水はない。きっと佐渡の人はお金出して水なんて買わないんだよ、という結論に達する(笑)。元同僚@928 Carbonがコーラを買ったので、その残りを少しもらう。結局ここでも5分ほど休んで、13時4分に再スタート。

13時39分頃にようやく140km地点の多田ASに到着。元同僚はトイレに、僕はボトルに水を詰める。先月ずっと膝を痛めていた元同僚は休憩中はこまめにストレッチをしている。それでもここまで膝痛は再発していないという。若干ポジションを替えたらしいのだけれど、一体なんだったんだろうね。取り敢えず喜ばしい。

多田AS

ただね、両津以降、足切りの時間は平均時速20kmペースだと漠然と思っていたんだよね。だから両津出発時の30分のアドバンテージは、これだけあれば案外余裕じゃん?と勘違いしていた。実は、多田ASの足切りは14時だったのだ。両津AS→多田ASの40kmは、平均27km弱換算だった。確かにZ坂や大野亀、または小木AS以降から続くボスキャラのような坂はないけれど…。この勘違いが(若しくは勘違いにもっと早く気がつかなかったことが)痛かった。13時56分まですっかり休んでしまった僕らは慌てて出発する。

多田AS

そんなわけで、この後、走っている間はこの多田ASの写真が最後となった。ほんと、結局かつかつだったのよ(笑)。

13時56分、慌ててスタート。巡航速度も30kmオーバにまで上げる。元同僚に「少し速い」と言われたが、ごめん、僕は完走したいんだ。スタート前は、これで最後でもないし完走できなきゃできないでいいやと思っていたのだが、走っているうちに、徐々に完走したいという思いが強くなってきた。そのために準備もしてきた。今回ビリでもいいからとにかく完走する。強い思いが芽生えた。

ASを僕らより先に出た人たちをぽつぽつ抜いていく。先へ先へ。前へ前へ。

14時50分頃、162km地点の小木ASに到着。ASに入る前に誘導スタッフに「足切り10分前ですよー」と諭される。知っている(笑)。それでもひと息入れるために停車。テントでバナナをもらい食べていると、元同僚が「じゃあ、僕はここで」と言う。一瞬何のことかわからなかったが、リタイヤするということらしい。驚いた。走れないほどしんどいようには見えなかったのだけれど…うーん、時間がないのであんまり詳しい事情を訊いている暇もない(笑)。わかった、じゃあ、取り敢えずゴールで、と言って僕はスタートする。14時54分。目指すは20km先の素浜AS。高低差はさほどではないが急坂が待ち受ける。

そんなわけでここから一人旅。沢崎鼻を前後に挟んで急坂が続く。もうこうなったら坂の途中で足も着きたくないし、とにかくインナーローでぎしぎし上る。「ふん、こんな坂、菊名の坂に比べればまだまだ」なんて軽口を叩きながらぜいぜい上る(笑)。普段ぶーぶー言いながら綱島街道の坂を上がっているくせに、こんなときだけ擁護派になっている。Z坂でも自転車押しながら歩いている人もいたが、もうこのあたりでは道路左端は押し歩きの人専用レーンのように、連なっている。押している人がこんなにいなければ、逆に僕も諦めて降りて押していたかもしれない。けれど、変な意地が働いたのか、とにかく漕ぐ。時速は7〜8kmほど。それでも押して歩く人よりは速い。

漕ぎながらメータを読んで、180km地点とされる素浜AS(16時足切り)までの距離を逆算。15分前に着けるか?とにかくギリギリだ。素浜ASをクリアしてしまえば、あとはゴールまでの30kmを2時間なので、案外余裕がある。つまり16時までに素浜ASをスタートし、しかもその後のラスボスのような坂を上りきれれば、もうゴールしたも同然なのだ。だからとにかく時間内に素浜ASまで。それしかない。

結局15時52分に素浜AS到着(もう写真も撮っていないので、時間の経緯はGPSのログから)。おい、180kmより5kmくらい遠いだろ、ここ。ちぇっ、時間逆算を読み誤ったよ(というか、実は時間より精神的なものの方が大きい・笑)。ここでも再びバナナを食べる。制限時間まで10分もないのに結構な人が休んでいる。最後のASで制限時間も迫っているせいか、スタッフにも見解の相違が見られ、「あと3分です!急いでください!」と叫ぶ人もいれば、「いいよ、少し多めに見てあげるからちゃんと食べて行きな!」と声をかけてくれるスタッフもいた。僕も興奮しているのでなんだか泣きそうになる(笑)。このあとは急坂が二本。ここでやられたら水の泡だ。すぐ隣の二人組の男子が、「つまりZをあと二本上ればいいんでしょ」と話し合っているのを聞いて、少し気分が楽になる。そうか、Z坂二本ならおそらくまだ上れる。よし、取り敢えず出発。15時58分。

ASを出て、ほんとすぐに坂。ここも左端は押し歩きレーンだ。僕は時速8kmでかろうじて彼らを抜いて行く。Z坂より少し長いのでは?というラスト2の坂が終わる。ぎゃーっと下って、16時28分頃、最後の坂が始まる。ラスボスだ。16時42分、上り坂終了。あとは下り。GPSのログも軽快に(?)ケイデンス0が続く。坂の途中で沿道の人が「もう上りはないよ!ファイト!」と叫ぶ。ありがとう、頑張るよ。

と思った瞬間、小佐渡の山岳部が終わって平野部に入った途端に思いっきり向かい風…。うへ、上り坂よりこっちの方が辛いかも…。ううう。もともと坂より向かい風の方が嫌い…なのだ。というわけで、パッド付きインナパンツがズレてきちゃって少し気持ちが悪かったせいもあって、17時8分、205kmのあたりで一時停止。パンツ直して水飲んで屈伸して、リスタート。おっしゃ、行くよ。あと5km。さっき抜いた人に何人か抜き返された。

とはいえ、まあ向かい風。ただ、ここまでくればトラブルさえなければ時間切れになることはないので、慎重に。時間は気にせず、今回は取り敢えず完走すればよい。真野の町を抜け、去年Bコースで走ったA・B合流地点を過ぎ、見覚えのある角を曲がり…もうここまで来るとMCがゴール!と叫んでいる声が聞こえる。よかった、間に合った。

計測タグのセンサを乗り越え、ゴールゲートをくぐる。17時25分。相方と元同僚はゴールで待っていてくれたのか?判別できないまま完走手続きの受付に回る。そこで相方に電話をすると、二人ともゴール付近ではなくレンタカーを止めた駐車場にいるという。おいおい、せっかくだからゴールにいてくれよ(笑)、と少し思うが、まあよい。誰かのために走っているわけではないのだ。

ゴール

これまた去年同様、地元の写真屋が撮ってくれたゴールシーン。ゴール付近とは別に17km地点でも撮影してくれていて、相方はそのどちらにも映っていたが、僕も元同僚もそちらには全く映っていなかった。相方も映ってるし今年はちゃんと購入するかな…。


ゴールした途端に空腹を感じて、焼きそばを買って食べる。体も冷えて来たのでウインドブレーカを着る。

陽は傾く

それから二人の待つ駐車場へ。いや現実的にはこうして二人が帰りの準備をしてくれていたから、最終のフェリー(19時半両津発)に間に合ったのだ。それくらい、時間ギリギリ。助かった。

どうにかこうにか最終のフェリーに乗り、22時頃に新潟に。フェリーで缶ビール、乾杯!今夜は新潟で一泊し月曜の朝に帰京予定。新潟駅前のホテルにチェックインしてから、居酒屋で再びビールビールビール(ほんとは、寿司屋だ!なんて意気込みもあったのだけれど、日曜の夜のこんな時間にめぼしいところは開いておらず、その辺の居酒屋に飛び込んだ)。いやぁ、その辺の居酒屋でもビールは旨い。三人で、お互い共有できなかった時間をそれぞれ確認・説明し合う。。

駅前の繁華街

5月19日午前0時33分撮影。